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カオルさんの朝は足取りが重く2

天満敦子のヴァイオリンは泣き節だと言ったことを、アスミさんは思い出していました。その時の話し相手がだれだったのか、今では思い出せないのにあの一言は覚えています。ラジオやCDで、2,3回耳にしただけなのに、自分はずいぶん生意気だと分かっていながら、言葉のはずみで言ってしまったのです。

益子焼のマグカップにお湯を注ぎながら、湯気のなかに記憶が見え隠れしています。振り向けば、カオルさんがていねいにレシートを糊付けしています。
職場に後輩がいることをいつも望んでいたはずなのに、アスミさんは毎日いらいらしてしまい、そういう自分のこころの景色にうんざりしてもいます。
インスタントのジャスミンティーを淹れながら、アスミさんはヴァイオリンの音を聞いているような気分になりました。あのとき、泣き節だと言ったあの音色は、泣かせ節なのだと考えます。今、あの演奏を聞いたらきっと泣いてしまうだろうと、アスミさんは感じているのです。

泣いている時間などないのです。決算が終わったばかりで、その後始末を済ませてしまわなければ、2か月分の処理が遅れたままです。
ジャスミンティーの香りを机に漂わせながら、決算書と税理士事務所から渡された「期末修正」とタイトルされた用紙をひろげました。