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カオルさんの朝は足取りが重く

 昨夜の雨を大きな機械で吸い取ったように、さらりとした肌触りの朝です。

事務室の掃除もひと通り終わらせると、カオルさんは片袖タイプの事務机に寄り、一番下の引き出しを開けます。パートで働き始めてまだ1週間というのに、この引き出しは日増しに重くなっていくように思えてなりません。

そんなはずはないと自分に言い聞かせて、大きめの封筒を取り出し、中の領収書やレシートを机の上に拡げました。大き目のクリップでまとめられた束が3つあるものの、ほとんどはケンカでもしているように重なりあい揉みあいしています。

仕事は初心者向けのような、掃除やコピー取り。そして、次に指示されたのが、大きな封筒に詰め込まれた領収書類のファイルです。月別に、日付順に、という簡単な説明を、先輩のアスミさんから伝えられただけでした。

カオルさんは、大き目の領収書を1枚手に取ってみたところ、日付は3月6日でした。ではまず3月分のあることが分かったのですから、3月の日付のものだけを集めることにしました。まもなく、1月と2月の日付のものもあることが分かってきました。3か月分ならそれほど時間はかからないな、などと考えていますと、気づかぬうちにアスミさんが後ろに立っており、何をやっているのかと咎める声を向けてきました。

カオルさんのやり方では時間がかかりすぎると、アスミさんは言います。机の上に3つのスペースを決めて、領収書を月別のグループに分けたほうが早いのだというのです。ああそうかと思うものの、こんなこともできないのかと言わんばかりの大きな声に、カオルさんはすっかり萎縮してしまったのです。

また叱られたりしないよう、アスミさんが席に着く前に領収書を3つの山に分けてしまいました。クリップで挟むように山の一つを取って、トントンと紙の一辺を揃えようとしましたが大きさがまちまちで苦心します。

また無駄なことをして、という声がカオルさんの肩を掴むように聞こえました。山にしたままで、日付順にそろえ、その時に紙の一辺を合わせれば済むことではないかと、自分でやって見せます。興奮したように大きな呼吸をしているアスミさんの、イラついたような手作業を見つめるだけのカオルさんでした。